こんにちは。芝ポーラ歯科です。
歯肉や骨などをあわせて歯周組織といい、歯を支える土台のような存在です。むし歯が「歯そのもの」の病気として説明されることが多いのに対し、歯周病は「歯を支える周りの組織」に炎症が起こる状態として知られています。歯周組織を知ることは、歯肉の出血や口臭などの変化に早く気づき、予防やケアにつなげる助けになります
―歯周組織とは何ですか―
歯周組織とは、歯の根を取り囲み、噛む力を受け止めながら歯を安定させる組織の総称です。主に次の4つで成り立っています。
・歯肉(しにく)
・歯根膜(しこんまく)
・セメント質
・歯槽骨(しそうこつ)この4つがチームのように働き、毎日の食事や会話、歯みがきなどでかかる力から歯を守っています。

―歯肉の役割―
歯肉は口の中から見えるピンク色の部分で、歯の周りを取り囲む粘膜です。歯肉は、細菌や汚れが体の中へ入り込みにくいようにする 「入り口の守り」の役割があります。
◎遊離歯肉と付着歯肉
歯肉は、歯に沿って輪のように取り巻く「遊離歯肉」と、下の骨にしっかり結びついた「付着歯肉」に分けて説明されます。付着歯肉は動きにくく、噛むときや歯みがきの刺激に耐えやすい性質があります。付着歯肉の外側には、頬や唇の内側の柔らかい粘膜が続き、その境目は「歯肉粘膜境」と呼ばれます。
◎歯と歯肉の境目
歯と歯肉の境目には、もともと浅い溝があり「歯肉溝」と呼ばれます。歯肉溝の内側には「付着上皮」という組織があり、歯の表面に密着して、細菌が入り込みにくい状態を保つ助けになります。この境目はプラーク(歯垢)が残りやすい場所でもあるため、やさしく丁寧な清掃が大切です。
◎歯肉に炎症が起こると
歯肉に炎症が起こると、赤み、腫れ、出血しやすさなどがみられることがあります。歯みがきのときに出血が続く場合、歯肉炎の可能性が考えられます。歯肉炎は炎症が歯肉に限局している状態で、清掃や専門的なクリーニングで落ち着くことがあります。一方、炎症が長く続くと、より深い部分(歯根膜や歯槽骨)に影響が及ぶこともあるため、症状が気になるときは歯科で状態を確認することが安心につながります。
―歯根膜の役割―
歯根膜は、歯の根と歯槽骨の間にある薄い組織で、歯周組織の中でも重要なクッションとセンサーの働きを担います。目では見えませんが、噛むときの感覚や歯の安定に関わります。
◎噛む力を分散するクッション
硬いものを噛むと歯に大きな力がかかります。歯根膜はその力をやわらげ、歯槽骨へ均等に伝えるように働きます。歯が骨に直接くっついていないのは、力の逃げ道を作るためだと理解するとイメージしやすいです。
◎力の強さを感じるセンサー
歯根膜には神経があり、噛む力の強さや、歯に当たる刺激を感じ取ります。これにより、強く噛みすぎないように調整しやすくなり、食べ物の硬さを感じることにもつながります。
◎修復や入れ替わり(代謝)を支える
歯根膜には血管が多く、周囲の組織へ栄養を運びます。また、歯槽骨やセメント質の入れ替わりにも関わり、歯周組織の健康を保つ助けになります。
―セメント質の役割―
セメント質は歯の根の表面を覆う硬い組織です。歯の頭の部分(歯冠)を覆うエナメル質よりはやわらかいですが、歯根膜の線維が入り込む足場になり、歯と骨をつなぐうえで重要です。
◎根の表面のコーティング
セメント質は歯根を保護し、外からの刺激を受けにくくします。また、歯根膜の線維が付着しやすい環境を作ります。歯肉が下がって根が露出すると、エナメル質より刺激を受けやすい部位が口の中に出てくることがあり、冷たいものがしみる(知覚過敏)につながる場合があります。
―歯槽骨の役割―
歯槽骨は、あごの骨のうち歯を支える部分です。歯の根を取り囲むように存在し、歯根膜と協力して歯を固定します。
◎骨は変化する組織です
骨は一度できたら終わりではなく、日々少しずつ作り替えが起きています。歯槽骨も同様で、噛む力や炎症などの影響で形が変わることがあります。歯周病が進行すると、炎症により歯槽骨が吸収される(減っていく)ことがあり、歯の支えが弱くなる要因の一つになります。
◎歯を失った後の変化
歯を失うと、その部位の歯槽骨は時間とともに形が変わることが知られています。欠損が長く続くと噛み合わせや清掃性に影響が出やすくなるため、治療の選択肢について歯科で相談することが大切です。
―歯周ポケット―
歯と歯肉の境目の溝(歯肉溝)が、炎症などで深くなったものが「歯周ポケット」です。歯周ポケットが深くなると歯ブラシが届きにくくなり、プラークや歯石がたまりやすくなることがあります。歯科では、専用の器具(プローブ)で深さや出 血の有無を確認し、歯周組織の状態を評価します。
―歯周組織が健康なときの目安―
歯周組織が落ち着いていると、一般的に次のような傾向がみられます。・歯肉の色が落ち着いている・歯みがきで出血しにくい・歯肉が腫れぼったくない・口の中のねばつきが少ないただし、見た目だけでは分かりにくいこともあります。症状が少なくても歯周ポケットや歯石の有無は検査で確認できるため定期的にチェックすることが役立ちます。
―歯周組織が弱っているかもしれないサイン―
次のような変化が続くときは、歯周組織に炎症や負担がかかっている可能性があります。
・歯肉からの出血が続く
・歯肉が赤い、腫れている
・歯肉が下がって歯が長く見える
・歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
・口臭が気になる
・歯が浮いた感じ、揺れる感じがする
これらは他の原因でも起こり得るため、自己判断だけで決めつけず、歯科で原因を確認することが大切です。
―歯周組織を守るための基本―
歯周病はプラーク中の細菌が関与する炎症性の疾患として知られています。そのため、歯周組織を守るうえで「プラークをためにくい環境を作ること」が基本になります。
◎プラークと歯石の違い
プラークは細菌のかたまりで、歯みがきで減らしやすい汚れです。プラークが長時間残ると硬くなり「歯石」になることがあります。歯石は歯ブラシでは落とすことが難しく、歯科でのクリーニングが必要になることが多いです。
◎歯ブラシのコツ
歯と歯肉の境目は汚れが残りやすい場所です。毛先を境目にやさしく当て、小さく動かすと汚れが落ちやすくなります。強くこすると歯肉を傷つけることがあるため、力加減は控えめが基本です。
◎歯間ケア
歯と歯の間は歯ブラシだけでは汚れが残りやすい部位です。デンタルフロスや歯間ブラシを併用すると、歯間部のプラークを減らしやすくなります。サイズや使い方はお口の状態で変わるため、歯科で相談すると安心です。
―歯科医院で行う歯周組織の検査とクリーニング
歯科では、検査結果に基づいて歯周組織の状態を把握し、必要に応じてクリーニングや治療を検討します。ここでは一般的な内容としてご紹介します。
◎歯周基本検査
歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯の揺れ(動揺)、プラークの付着状況などを確認します。必要に応じてレントゲンで歯槽骨の状態も確認します。
◎スケーリング(歯石除去)
歯の表面や歯肉の近くに付いた歯石を専用の器具で除去します。歯石は細菌が付着しやすい足場になることがあるため、除去することで歯肉の炎症が落ち着く方向に向かうことがあります。
◎ルートプレーニング(根の表面の清掃)
歯周ポケットが深い場合、歯肉の中にある歯根表面に汚れや歯石が付いていることがあります。根の表面を清掃してなめらかに整えることで、プラークが付きにくい環境づくりを目指します。
◎歯周外科処置
歯周ポケットが4㎜以上の場合、ルートプレーニングでも歯石が除去しきれないことがあります。その際は、歯肉を切開して、歯や骨を露出させて歯石を除去します。
また、歯肉を移植して形を修正したり、薬剤を使用して歯周組織の再生を図る処置を行うこともあります。
―歯周組織が“守り”を作るしくみ―
口の中には多くの細菌が存在します。その中で歯 周組織は、体の中へ細菌が入り込みにくいように、いくつかの防御のしくみを持っています。
◎歯肉溝浸出液(しにくこうしんしゅつえき)
歯肉溝には、少量の液体がしみ出しています。これを歯肉溝浸出液と呼びます。歯肉溝浸出液には免疫に関わる成分が含まれ、歯周組織を守る働きに関係するとされています。炎症があると量が増える傾向があるため、歯周組織の状態を知る手がかりの一つになります。
◎唾液の働き
唾液には、口の中を洗い流す作用、粘膜を保護する作用、細菌の増殖を抑える方向に働く成分が含まれることが知られています。口が乾きやすい状態(ドライマウス)では、プラークが残りやすくなることがあります。お薬の影響や生活習慣などで唾液が減ることもあるため、気になる方は歯科でご相談ください。
―歯根膜の線維―
歯根膜の中には、コラーゲン線維が束になって走っており、歯と歯槽骨を結びつけています。線維はさまざまな方向へ伸び、噛む力がかかったときに歯が一方向へ押し込まれすぎないように支えます。また、歯根膜には線維を作る細胞や、骨の作り替えに関わる細胞も存在し、歯周組織の維持に関係します。
―歯周組織と“力”の関係―
食いしばりや歯ぎしりがあると、歯や歯周組織に強い力がかかることがあります。力の影響は一人ひとり異なりますが、歯のすり減り、歯の揺れ、歯肉の違和感などにつながることがあります。歯周病による炎症がある場合は、炎症と力が重なって負担が増えることもあります。必要に応じて噛み合わせの確認や、就寝時のマウスピース(ナイトガード)などを検討することがあります。


